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マンション管理費の値上げの原因は?決議の仕組みと値上げ幅を抑える方法を解説
目次
マンションの管理費について値上げの通知を受けると、「管理会社が一方的に決められるのか」「反対すれば、これまでの金額のままでよいのか」と疑問を感じる方もいるでしょう。
結論からいうと、管理会社だけで管理費を値上げすることはできません。ただし、管理組合の総会で適正な手続きを経て値上げが決議された場合、原則として反対した区分所有者にも新しい金額が適用されます。
大切なのは、値上げに賛成するか反対するかを先に決めることではありません。管理費が不足する理由と値上げ幅の根拠を確認し、現在の管理水準を保つために必要な金額かどうかを判断することです。
この記事では、マンション管理費が値上げされる主な原因、総会決議の考え方、区分所有者が確認したい資料、値上げ幅を抑える方法について解説します。
マンション管理費の値上げは総会で決める
国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)では、「管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法」は、総会の決議を経なければならない事項とされています。
管理会社から管理委託費の増額を求められることはありますが、区分所有者から徴収する管理費の金額を管理会社だけで変更することはできません。管理組合が増額の必要性や金額を検討し、管理規約に沿って総会で決議します。
普通決議か特別決議かは管理規約の定め方によって異なる
値上げに必要な決議は、管理費の金額が管理規約でどのように定められているかによって異なります。
たとえば、管理規約では「専有部分の床面積割合に応じて負担する」といった算出基準のみを定め、具体的な金額を総会で別に決めているマンションでは、規約を変更せずに普通決議で金額を見直せることがあります。国土交通省のマンション標準管理規約も、管理費の額を総会決議事項とする構成です。
一方、管理規約の本文や別表に住戸ごとの具体的な金額が記載され、その変更が規約変更に当たる場合は、特別決議が必要です。
普通決議と特別決議では、総会の成立要件や必要な賛成割合が異なります。どちらに該当するかは、実際の管理規約と値上げ議案の内容を照らし合わせて判断しなければなりません。
2026年4月の法改正で決議要件が見直された
2026年4月に改正区分所有法が施行され、普通決議については、原則として総会に出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決議する仕組みへ見直されました。委任状や議決権行使書によって議決権を行使した区分所有者も、出席者として扱われます。
規約の変更などに必要な特別決議についても、総会の成立に必要な定足数と、出席者を基準とした決議要件が設けられています。
ただし、実際の手続きには各マンションの管理規約も関係します。改正法へ対応した規約変更が済んでいるかどうかも含め、判断に迷う場合はマンション管理士や弁護士などへ確認するのが確実です。
反対しても決議後の値上げは適用される
適正な手続きを経て管理費の値上げが決議された場合、原則として反対した区分所有者にも変更後の金額が適用されます。
「総会で反対票を投じた」「総会を欠席した」という理由だけで、従来の金額を払い続けることはできません。値上げ後の金額を支払わなければ、差額分が滞納として扱われるおそれがあります。
マンション管理費とは?
マンション管理費は、共用部分の日常的な維持・管理や、管理組合の運営に使用される費用です。
国土交通省のマンション標準管理規約では、管理員の人件費、共用設備の保守・運転費、清掃費、損害保険料、経常的な補修費、管理会社への委託業務費などが主な使途として示されています。
管理費を負担するのは、マンションに住んでいる人ではなく、原則として住戸を所有する区分所有者です。住戸を賃貸している場合も、管理組合に対する支払義務は区分所有者にあります。
なお、管理費が値上げされたからといって、賃貸中の住戸の家賃へ自動的に上乗せできるわけではありません。賃料を変更できるかどうかは、賃貸借契約や個別の事情によって判断されます。
管理費と修繕積立金の違い
管理費と修繕積立金は、どちらもマンションの維持に必要なお金ですが、使い道が異なります。
| 項目 | 管理費 | 修繕積立金 |
| 主な目的 | 日常的な維持・管理 | 将来の大規模修繕などへの備え |
| 主な使い道 | 清掃、設備点検、共用部分の水道光熱費、管理委託費など | 外壁補修、屋上防水、給排水管やエレベーターの更新など |
| 費用の性質 | 現在の管理に使うお金 | 将来の工事に備えて積み立てるお金 |
| 会計 | 修繕積立金と区分して管理 | 管理費と区分して管理 |
管理費の不足と修繕積立金の不足は、原因も対応方法も同じではありません。一方で、人件費や物価、工事費が同時に上昇している場合など、管理費と修繕積立金の両方を値上げする議案が出されることもあります。
総会議案を見るときは、どちらの会計に、いくら不足しているのかを分けて確認しましょう。
マンション管理費の平均額
国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、管理費会計に充てられる駐車場使用料などを含めた月・戸当たりの平均額は17,103円です。
平成30年度調査の15,956円と比べると、平均額は1,147円増えています。ただし、この数字だけで全国のすべてのマンションが一律に値上げされているとは判断できません。調査対象となったマンションの構成が異なる点にも注意が必要です。
実際の管理費は、総戸数、共用設備、管理員の勤務形態、管理サービスの内容などによって大きく変わります。平均より高いという理由だけで、直ちに割高とはいえません。
管理費と修繕積立金の平均額や、マンションの規模による違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:マンション管理費・修繕積立金の相場はいくら?平均額と高い場合の目安を解説
マンション管理費が値上げされる主な原因
マンション管理費が値上げされるのは、現在の徴収額では日常的な管理に必要な費用を賄えなくなったときです。
もっとも、「費用が増えた」という説明だけでは、値上げが妥当かどうかは判断できません。原因ごとに、確認すべきポイントを見ていきましょう。
当初の設定金額が低かった
分譲時に設定された管理費が、実際の管理に必要な金額を十分に反映していないことがあります。管理開始後に業務量や設備の維持費が明らかになり、当初の見込みとの差が生じるケースもあります。
管理費会計で毎年赤字が発生している場合や、繰越金を取り崩して不足分を補っている場合は、値上げに一定の合理性があると考えられます。ただし、単年度の赤字だけで判断せず、数年分の収支決算書から赤字が継続しているかを確認したいところです。
管理委託費や人件費が増加した
管理員、清掃員、設備点検員などの人件費が上昇すると、管理会社へ支払う管理委託費にも影響します。最低賃金の引き上げや人材不足も、人件費が上昇する背景のひとつです。
管理会社から委託費の増額を求められた場合は、総額だけでなく、管理員業務費、清掃費、設備管理費など、どの項目がどの程度増えるのかを確認します。
人件費の上昇自体に合理性があっても、提示された増額幅まで妥当とは限りません。業務時間や人員配置に変更がないか、必要に応じて相見積もりも確認すると判断しやすくなります。
電気代や保険料などが上昇した
エントランス、廊下、階段、エレベーターなど、共用部分の電気代は管理費から支出されます。このほか、水道料金、損害保険料、清掃用品や交換部品などの値上がりも、管理費を押し上げます。
これらの費用は、過去数年分の請求書や決算書を比較すれば増加額を確認しやすい項目です。電気代であれば、単価の上昇だけでなく、使用量が増えていないかも確認してみましょう。
管理費の滞納や使用料収入の減少が発生した
管理費の滞納が増えると、予定していた収入を確保できず、管理費会計の資金繰りが厳しくなります。
ただし、滞納分は本来、滞納している区分所有者から回収すべきものです。ほかの区分所有者への値上げだけで補うのではなく、滞納額、滞納期間、督促や法的手続きの状況を確認する必要があります。
また、駐車場の空き区画が増え、管理費会計に充当していた使用料収入が減少することもあります。この場合は、値上げだけでなく、駐車場契約や空き区画の活用方法も検討対象です。
管理業務や共用サービスが増えた
管理員の勤務時間を延長したり、清掃回数を増やしたりすれば、管理の質が上がる一方で費用も増加します。
防犯カメラ、宅配ボックスなどの設備を新設した場合も、導入費用だけでなく、保守点検費や電気代が継続的に発生します。
新しいサービスの導入に伴う値上げであれば、区分所有者が必要性を検討できるよう、導入目的、年間の維持費、代替案まで示されているかが判断材料になります。
管理費の値上げ案が出たときに確認したい資料
管理費の値上げに賛成するかどうかは、値上げ幅だけでは判断できません。区分所有者は、次のような資料から必要性を確認できます。
| 確認する資料 | 主な確認内容 |
| 収支決算書・収支予算書 | どの費用が増え、いくら不足しているか |
| 値上げ案の内訳・試算表 | 値上げ幅の根拠と、値上げ後の収支見込み |
| 管理委託契約書・業務仕様書 | 現在委託している業務の内容と範囲 |
| 管理会社からの見積書 | 委託費が増える項目と増額理由 |
| 相見積もりや削減案 | 管理水準を維持しながら支出を抑えられないか |
| 滞納状況に関する資料 | 滞納額、滞納期間、回収への対応状況 |
| 管理規約・総会議案書 | 値上げに必要な決議方法と適用開始時期 |
とくに確認したいのは、値上げを行わなかった場合に、どの管理業務へ影響が出るのかという点です。清掃や設備点検を過度に削減すると、居住環境だけでなく、建物の安全性や資産価値にも影響します。
値上げの根拠や、値上げしなかった場合の影響が議案書に記載されていなければ、総会前に理事会や管理会社へ質問しましょう。「現状維持」「一部業務の見直し」「管理費の増額」といった複数の選択肢が示されていると、区分所有者も判断しやすくなります。
マンション管理費の値上げ幅を抑える方法
管理に必要な費用が増えている場合、値上げを完全に回避することが適切とは限りません。一方で、業務内容や契約を見直せば、必要な管理水準を維持しながら値上げ幅を抑えられることがあります。
管理業務の内容や頻度を見直す
清掃の回数、管理員の勤務時間、定期点検の内容などを確認し、利用状況に対して過剰な業務がないか検討します。
たとえば、利用者の少ない時間帯まで管理員を配置している場合は、勤務時間を調整することで費用を抑えられるかもしれません。一方、単純に清掃や点検の回数を減らすと、住環境や安全性の低下につながります。
削減額だけでなく、変更後も必要な管理水準を維持できるかが判断の分かれ目です。
管理委託契約や管理会社を見直す
管理会社から増額の申し入れがあった場合は、増額理由と業務内容を確認し、必要に応じてほかの管理会社からも見積もりを取得します。
相見積もりを取ると、現在の契約が割高かどうかだけでなく、同じ金額でどこまで対応してもらえるかも比較できます。ただし、最も安い管理会社を選べばよいわけではありません。引き継ぎ体制、緊急時の対応、担当者の支援範囲まで含めた比較が必要です。
共用部分の電気料金を見直す
共用部分の照明をLEDへ切り替える、点灯時間を調整する、電力契約や料金プランを見直すといった方法があります。
LED化では交換費用が先に発生するため、年間の削減見込み額をもとに、何年で導入費用を回収できるかを確認します。照明を減らす場合も、防犯性や避難時の安全性を損なわないことが前提です。
滞納管理費の回収を進める
滞納が管理費会計を圧迫している場合は、滞納期間に応じて督促方法を整理し、必要に応じてマンション管理士や弁護士などへ相談します。
滞納を長期間放置すると回収が難しくなります。特定の区分所有者の滞納を、ほかの区分所有者への恒常的な値上げで補う状態になっていないかを確認しましょう。
空き駐車場などの活用を検討する
空き駐車場や空きスペースを外部へ貸し出し、管理組合の収入を増やす方法もあります。
ただし、外部への貸し出しには、管理規約上の手続き、安全管理、近隣への影響、税務上の取扱いなどの確認が必要です。収入だけを見るのではなく、設備の維持費や管理上の負担も含めて検討します。
清掃や植栽管理などを区分所有者が担当すれば、委託費を抑えられることがあります。
一部自主管理は継続できる体制が前提
一方で、担当者が高齢化したり、参加する区分所有者が減ったりすると、業務を続けられなくなることもあります。作業中の事故や品質管理の問題もあるため、善意の協力だけに頼らず、担当範囲や責任を決めておく必要があります。
一時的な資金不足への対応
管理費会計の恒常的な赤字を借入れで補うことは、根本的な解決になりません。毎年の収入より支出が多い状態であれば、管理費の見直しや支出削減が必要です。
これとは別に、共用部分の小修繕や保険料の支払いなどで一時的な資金需要が生じた場合は、管理組合による借入れを検討できることがあります。ただし、利息と将来の返済負担が生じるため、利用目的と返済原資を明確にしたうえで、値上げや支出見直しとは分けて判断しなければなりません。
関連記事:マンション管理組合は借入れできる?借入先・条件とデメリットを解説
管理費の支払いが負担になったときは早めに相談する
管理費が値上げされ、家計への負担が大きくなった場合も、支払いを放置することは避けましょう。まずは管理組合や管理会社へ相談し、支払時期や現在の滞納額を確認します。
滞納が続くと、遅延損害金を請求されるだけでなく、訴訟や強制執行へ進み、状況によっては区分所有権の競売が申し立てられることもあります。支払いの見通しが立たない段階で、早めに対応を考えることが必要です。
セゾンファンデックスでは、管理費など住まいに関する支払いが負担になっている方へ、状況に応じた選択肢を案内しています。
リースバックは、自宅を売却して賃貸借契約を結ぶことで、売却後も同じ家に住み続ける方法です。所有者ではなくなるため管理費や固定資産税の負担はなくなりますが、売却後は家賃が発生します。
リバースモーゲージは、自宅を担保に資金を借り入れる方法です。自宅の所有を続けながら資金を確保できますが、利用条件や返済方法は商品によって異なります。
いずれも管理費を直接引き下げる方法ではないため、今後の住居費や返済条件まで含めて検討しましょう。
マンション管理費の値上げで迷いやすい3つのポイント
管理費の値上げでは、決議方法だけでなく、総会を欠席する場合の手続きや新しい金額の適用時期にも疑問が生じます。ここでは、区分所有者が確認しておきたいポイントを整理します。
① 総会に出席できない場合、委任状や議決権行使書はどう扱われますか?
総会に出席できない場合は、委任状によって代理人に議決権の行使を委ねるか、議決権行使書で各議案への賛否を示す方法があります。
改正区分所有法第39条第2項では、書面または代理人によって議決権を行使した区分所有者の数と議決権数を、それぞれ出席した区分所有者の数と議決権数に算入すると定めています。国土交通省のマンション標準管理規約にも、この取り扱いが反映されています。
提出期限や代理人の範囲などはマンションごとに異なることがあるため、管理規約と総会の招集通知を確認してください。
② 値上げが決議された場合、いつから新しい金額になりますか?
値上げの適用開始日に、一律の決まりがあるわけではありません。通常は総会の議案書に「○年○月分から変更する」などと記載し、その内容で決議します。
決議日から直ちに値上げされるとは限らないため、議案書、総会議事録、管理組合からの案内を確認しましょう。
③ 値上げに反対する場合、総会前にできることはありますか?
まず、収支決算書、値上げの試算表、管理会社からの見積書などを確認し、値上げの根拠を整理します。資料が不足している場合は、総会前に理事会や管理会社へ質問できます。
代替案がある場合は、単に値上げへ反対するだけでなく、「管理業務の一部を見直す」「相見積もりを取得する」といった具体案を伝える方が、総会でも検討されやすくなります。
総会へ出席できない場合は、議決権行使書で意思を示す方法もあります。
管理費の値上げは、金額だけでなく使い道と根拠を確認しよう
マンション管理費は、管理会社だけの判断で一方的に値上げされるものではありません。管理組合が収支や管理内容を確認し、管理規約に沿って総会で決議します。
適正な手続きで値上げが決議された場合は、原則として反対した区分所有者にも新しい金額が適用されます。反対票を投じるだけでは、値上げ後の支払義務を免れることはできません。
値上げの議案は、単に「賛成か反対か」を決めるものではなく、自分たちの管理費が何に、いくら使われているのかを確認する機会でもあります。決算書や見積書から値上げの根拠を把握し、管理の質と負担額の両面から判断しましょう。

