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80代の夫婦が生活していくには、貯金はいくら残っていれば安心でしょうか?

ご質問内容

夫婦2人暮らしの70代の妻です。同じく70代の夫も仕事をやめ、収入は年金だけとなりました。健康なうちは、夫婦で旅行や趣味を楽しみたいと思っています。
80代になったとき貯金をいくら残しておけば、生活していけるでしょうか。

年齢:70代
職業:無職
世帯年収:300万円

専門家の回答

年金生活者になっても、ご夫婦が元気なうちは旅行やグルメを楽しんで充実した老後を過ごしたいものですね。そこで気になるのが、80代になったときにどの程度の貯金を残しておけばよいかという点です。

80代になると娯楽に使うお金が減り、医療費や介護費を意識した生活設計が必要になってきます。そこで、年金生活者の夫婦が80代になったときに必要な貯金額は、家計収支の赤字分の合計と介護費用をもとに見積もります。

まずは、家計収支の計算方法を見ていきましょう。年金生活者の家計収支は、年金収入から生活費を差し引いて求めます。総務省の2023年の「家計調査報告(家計収支編)」によると世帯主が65歳以上の二人以上世帯の月あたりの消費支出(生活費)は、世帯主の年齢ごとに以下のとおりとなっています。

  • 65歳~69歳:29万3,903円
  • 70歳~74歳:26万8,095円
  • 75歳以上:23万4,521円

世帯主が65歳~69歳の世帯に比べて、75歳以上の世帯は月に6万円近く支出が少ないとわかります。この理由は高齢になるほど行動範囲が狭まり、消費が活発でなくなるためと考えられます。今後の物価上昇分や医療費の増加を考慮しても、80代の生活費を現在と同程度と見積もってよいでしょう。

ご相談者のご家庭のような年額300万円程度の年金収入の手取りは、一般的に約90%となります(適用される控除などによって異なります)。そのため、収入金額300万円からの手取り金額はおよそ270万円(月額22万5,000円)と考えられます。80代の生活費が月額24万円だとすると、月あたりの赤字額は約1万5,000円です。
80歳から100歳までの20年分で計算すると、360万円(1万5,000円×12ヶ月×20年)が年金からの不足分となります。

次に、夫婦二人分の介護費用はどのくらい必要でしょうか。生命保険文化センターの2021年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護費用や介護期間の平均は、以下のとおりです。なお、以下の費用には公的介護保険の自己負担分も含まれます。
・一時的な費用(住宅改造や介護ベッドの購入費など):74万円
・月々の費用:8万3,000円(在宅4万8,000円、施設12万2,000円)
・介護期間: 61.1ヶ月(5年1ヶ月)

上記のとおり、月々の介護費用の平均は8万3,000円ですが、在宅介護か施設での介護かでかかる費用に差がある点に注意が必要です。同じデータで介護を行った場所は、在宅56.8%に対し、施設は41.7%です。このように施設での介護となるケースも多いため、多少ゆとりのある見積をしたほうが安心といえます。そこで、月々の介護費用は10万円で見積もることにします。

介護費用の総額は、以下のとおりです。
・一人分の介護費用総額:685万円(74万円+ (10万円×61.1ヶ月))
・二人分の介護費用総額:1,370万円(685万円×2人)

最後に毎月の収支の補填分の360万円と介護費用分1,370万円を合計すると、1,730万円となります。つまり、ご相談者ご夫婦が80代になった時点で約1,700万円の貯金があれば、ひとまず安心といえるでしょう。

ただし、ご夫婦二人とも要介護状態になるとはかぎりません。また、介護費用は入所する施設などによっても大きく異なります。地域の介護施設の情報収集をし、実際にどのくらい費用がかかるかを早めに把握するとよいでしょう。

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