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退職金で住宅ローンを返済すべきか悩んでいます。注意すべきことはありますか?
ご質問内容
定年退職が近く、妻と老後の生活費について検討中です。現状、二人の年金だけでは、毎月10万円ほど貯金を取り崩しながら老後の生活を送ることになるため、住宅ローンを退職金で返してしまおうか悩んでいます。住宅ローンを退職金で返済するときの注意点について教えてください。
年齢:55歳
職業:会社員
世帯年収:800万円
専門家の回答
定年退職時にまとまった退職金があれば、繰上げ返済に充てることでローン残高を大きく減らせるでしょう。
繰上げ返済は毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」と、返済期間を短縮する「期間短縮型」の2タイプがあります。どちらも元本の返済に充当されるため利息負担を減らせますが、より総返済額の削減に効果が高いと言われるのは期間短縮型です。
仮に退職金を使って期間短縮型で繰り上げ返済をすれば、住宅ローンの返済が定年後も続いたとしても短くすることができます。変動金利を選んでいる場合は、金利が今後上昇したらどうしよう・・といった心配からも早く解放されるでしょう。
一方、返済額軽減型で返済をすれば、定年退職後の住宅ローンの返済額を減らせます。
ただし前述のとおり「期間短縮型」のほうが総返済額は少なくて済みますが、完済するまで毎月の負担は大きいままです。
毎月の負担を減らしたいのであれば、「返済額軽減型」を検討してもよいでしょう。
期間短縮型、返済額軽減型どちらの方法でも、定年退職後生活費のうち住宅ローンの返済分が軽減されるため、貯金の取り崩し額を減らせるでしょう。
しかし住宅ローンの返済を重視しすぎて、多くの退職金を返済に充ててしまうと、手元のお金が少ないため、常に貯金額を心配する老後を過ごすことになるかもしれません。厚生労働省「令和3年度医療保険に関する基礎資料」によると、生涯の医療費のうち、70歳以上にかかる医療費が約49%との推計もあります。つまり老後は、医療費の備えがこれまで以上に必要になる可能性が高いということです。
したがって退職金を住宅ローンの返済に充てるときは、セカンドライフ向けのライフプランを作成したうえで慎重に検討するべきと考えます。
ご夫婦の公的年金額、退職金、理想の老後を送るための生活費などを踏まえてライフプランを作り、いくらまでなら退職金を住宅ローン返済に充てて良いのかを逆算するのです。
仮に定年退職後も雇用延長や、新しい職場などで働いて収入があることも視野に入れているなら、比較的多めに退職金を住宅ローンに充てても問題ないかもしれません。
かなり話が広がってしまいますが、長寿化により定年退職後の期間は、働いていた期間に匹敵する長さになりつつあります。長い定年退職後の生活を豊かに過ごすためにも、慎重に検討してほしいと思います。
また老後に住宅ローンが残ってしまいそうな方は、「リースバック」というサービスも有効な選択肢になります。
「リースバック」とは、自宅を売却して現金化し、それ以降は家賃を払って引き続き住み続けられるサービスです。
売買代金は一括で現金で受け取れるため、ローン返済にも充てられます。その後は家賃を支払う必要が生じますが、固定資産税や火災保険の負担がなくなります。今の家に住み続けられるので、引越し代もかかりません。